Apr 30, 2012

キムキドク「悪い女」

しかし「悪い女」と邦題付けた奴なんてセンスがないんだろう。英題は、a birdcage innだよ。こちらが原題に近いんだろうか、余程ましだ。悪い女なんてセンスは、悪い女なんだ、ってことにしていしまい、そこで思考が完結するとこにあ る。いわゆる典型的な女性に対する男の幻想という凡庸な認識に過ぎない。もちろん、下手に社会派じゃないとこが、キムキドクのいいとこかもしれない。ある 意味、暴力的な映画だった。キムキドクの映画デビューは96年以降だが、この物語の設定は明らかに、90年代以前のものだろう。といっても韓国の知識がからきしないので、どの時代なんだかピンとこない。民宿に住み込みの娼婦という以外に職業選択のない時代なんていつだろう。これは、むしろ、溝口の描く近世 日本じゃないかとおもる。特に娼婦や女性へのやさしさが溝口的。哀れんでいるわけでなく、彼は女性になりたいのではと思わせるフシがある。一方で、男性に 関しては、波止場で見せたマーロン・ブランドを思わせるものがある。特に、主人公の娼婦を食い物にする男がブランドと同じような格好をしていた。この映画では、男性同士の友情などはほとんど描かれなかったが、男性同士を描いたものを見てみたい気がする。また、キドクの残虐性は今村昌平に通じるものがあると思われる。娼婦が、無抵抗に次々と男性に身体を許すシーンは基本的に不快なものであるが、このような不快さをわりとストレートに出すのがショーヘイ・イマムラである。最近、キムキドクはサマリアという、この映画と通じる少女二人の話で、ベネチアを騒がせたらしいが、サマリアのイントロも決して主流になれな い匂いがする。キムキドクは、決して正規の映画教育を受けた訳でもなく、画家を志しパリに滞在したこともあるようだ。ともかく、反主流の匂いがする点も、 鈴木清順という東映の売れっ子に対する、イマムラの位置と似てないだろうか。まあ、鈴木清順からしたら、向こうは、ちっとも売れない映画をつくり、海外で賞をもらいやがってということらしいが。売れない映画を作る事を許された特権的映画監督。



No comments: