Apr 13, 2008

逆張りトレードの終焉

夜、雨が降っていたので週末の夜なのに飲みに行くことは止めて、長い夜をぼんやりして過ごすことになり、ふと自分の近況を振り返ることに・・・。
昨年の8月にサブプライム問題が一気に実態経済に影響を与えるようになった。それ以前から、クルーグマン先生はじめ、バブルは終わると警鐘を鳴らしていたわけでだけども、浴深くてアホなデイトレーダーなる人種は、泡沫に流されていった。僕もそのうちの一人で、広告制作会社を過労でやめて郷里にもどってから始めた安閑としてそして鹿児島の美しい自然の中にて行なうには異質なトレード生活に終止符を打たれる嵌めになった。市場からの退場というやつだ。それがきっかけで、本格的に転職活動をせざることになった。もちろん、デイトレードといういわばアービトラージの鞘取り合戦を、反射神経だけで永遠と続けるなんてことは考えたこともなかった。ドストエフスキーが、処女作が売れなかったらドニエプル川に身を投げようなんて悲壮な覚悟で投機屋になったわけではない。30を過ぎた男が必死の覚悟でなるものではないだろう。いつかわからないけど、広告や企業コミュニケーションという業界にもどるんじゃないかなということは頭の片隅にはあった。一体トレード生活というのはどういうものかというと、外為の市場は、日本時間の月曜6時から土曜の6時まで開いている。その間は、ずっとトレードしようと思えば可能だし、逆に言うと、その間、気が休まることはない。必然的に、PCの前に、芋虫のように張り付くはめになる。昨年の3月に、ロシアのヘッジファンドが暴れ、一時的に円を高騰させた時に、逆張りでき、はした金を手に入れ、それを元手に、デュアルコアCPUのPCを新調し、デスクトップのモニターをダブルにすることで、ますますPC前が快適になり自宅の部屋からすらほとんど出なくなった。
その中で、ネットサーフだけでは飽きがきたので、チャットすることで暇を潰すことになった。特に、外国の女性と話をすることが多く、中には日本に在住されてる方々には実際にお会いすることになったこともある。そのチャットで、モスクワの女性に出会った。かなり年齢が若いがアメリカのロック好きで、写真を見る限りではかなりの美貌ということで、毎晩彼女が職場から帰宅するというあちら時間で7時、こちらで午前1時から1時間ほどのチャットをほぼ毎晩行なうことになった。現実的に考えると、モスクワの子とチャットだけで関係を続けるなんて不可能だが、デイトレーダーの生活は、すべて電脳の中にあり、それが夢をかなえる部分がないこともないわけだ。トレード如何によって、自分の銀行残高は膨れ、それがPCや服などに変換されるわけだし。ちなみにそのショッピングもオンラインで行なっていた。そうすると恋人だって、電脳空間を通じて見つかるかもしれないと考えてもよいのだ。だが、結論からいうと、それはデイトレーダーの泡沫の望みであり、サブプライムという人為的災害の現実がトレーダーを泡沫の夢から引きずりだし、市場から退場させたように、ネットでの超遠距離恋愛もどきは、現実的なコミュニケーションの不可能性の前に引きずりだされ、終止符を打たされることになった。しかし、注目すべきは、僕達の関係(ネットでの関係だけじゃ、言ってみれば始まってすらないが・・・)が、終わったのは、サブプライムによる金融不安が顕在化した後の昨年の8月のことで、トレーダー生活もほぼ終わった、職業的にはもっとも不安定な時期に始まったことになる。そして、この度、僕がとある米国メディア企業への転職が決まったことで、その関係が終わったことになる。
今振り返ると、つまり、これは過去の出来事なのだが、毎日毎日ほんとにくだらないどうでもいい会話ばかりを繰り返していたように思う。ただなんとなく話すことが目的化した、一日の中のリチュアルのようなものだったんだろう。今では、東京時間に合わせて起きる生活になったので、平日の午前1時以降に話をするなんてこと自体、現実性がない。
過去を清算するというのがどういうことかよくわからないが、要するに、トレードの暇つぶしで始まったチャット恋愛もどきはやっぱり単に暇つぶしだったのだという陳腐な着地点と言える。そういえば恋愛事態も単なる暇つぶしではないのか。いや人生そのものが果たしてそうではないと言い切れるのだろうか・・・

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