Stimulus Gone Bad by paul krugman 2008/1/25 NYT
下院民主党とホワイトハウスは、景気刺激策に対する同意を見た。残念ながらこの刺激策では、本質的に家計の良好な人たちへの減税にしかならず、レモン(*出来損ない、she is lemon だと口説く価値のないという意味。反対はアップル)にしか見えない。
特に、民主党員が、ブッシュ政権のイデオロギー的な頑強さに迎合し、より助けを必要としている人々への支援の要求規定を引っ込めたことだ。この規定は刺激策を効果的にすることができたかもしれない。
厳しい言葉だが、何が起きているのか私が説明しよう。
ビジネス減税のほかに―これも物悲しい話で、別のコラムで書くようにする―今回の刺激策は、年収が75,000ドル以下の労働者に300ドルの小切手を、つまり十分に所得税を支払っている人に還元するというものだ。つまり家計をだいたいきちんとやりくりしている人たちに、大量のお金を還流するに過ぎない。これでは完全に肝をはずしている。
刺激策の最終的なゴールは、支出を増大することで、不況を回避させるか深さを限定させることにある。もし政府のお金が使われることにならなかったら―もし単に人々の銀行残高を増やすだけであるとか借金の支払いに使われるだけなら―この刺激策は失敗に終わる。
家計が上手く行っている人に小切手を送っても、彼らの支出の総体にはほとんど影響を与えない。高い収入を得ている人、よい信用歴を持ち雇用の安定している人というのは、支出を最近の給料の多寡よりも長期的な収入の力を見て決めるからだ。そのような人たちに数百ドルのお小遣いを与えても、銀行に貯金するだけだろう。
2001年の前回の不況時に減税した際、実際裕福なアメリカ人はそうしたのであった。
その一方で、家計の苦しい人にお金を配ったらどうだろう―現金が足りず、給料日を綱渡りしている人―には、とても役立つだろう。困難を和らげ消費支出も押し上げるだろう。
だからこそ数日前に最初に話されていた刺激策は、困難に直面している失業保険受給者や食料券で生活している人たちを助けることに焦点が当たっていた。そして、このような刺激策は非政党的な議会予算局から、もっとも効果的な政策だとお墨付きを得ていた。
民主党員たちの間では、弱体化した経済によって予算の逼迫している地方政府を支援してはどうかという話も出ていた。失業者を支援するように大きな助けとなるだろう。困難を回避し支出減額に動けば情勢はさらに悪化するであろう。
しかし、ブッシュ政権は、あまり使いようもない人にお金を渡すことを好み、明らかに上記のアイディアを潰すことに成功した。
なぜ政権はこうしたかったのか? これは経済的な効果などとはまったく関係ない。私の知る限りどんな経済理論も中上流家庭に払い戻し小切手を送った方が、貧困層や失業者に送るより支出が増えるなどというのは聞いたことがない。その代わり、何が起きているかというと、ブッシュ政権は、「減税」以外の名の付くもの以外には、承認を与えたがらないように見える。
拒絶の背景には、言って見れば、問題を抱えた家庭よりも裕福な人への減税を行なうことへのコミットメントが存在している。そのコミットとは、政府支出は常に悪いことだという振りを維持することである。だからこの刺激策は助けが必要な人を支援することに失敗するだけでなく、経済的な対策そのものとしても失敗しそうだということだ。
フランクリン・ルーズベルトの言葉が心によぎる。「軽はずみな自己保身はモラルとしてもよくないが、今や、経済にとってもよくないことを我々は知っている。」
最悪なのは、民主党だ。経済政策でどんな信用も残っていない現政権に対して強い立場にいるはずなのだが、ほとんど完全に迎合してしまっているからだ。
そう、彼らは裕福な人を支援するのではなく、低取得者の人たちに払い戻しを増額するにはした。しかし、基本的にブッシュ政権の言うとおりにしてしまったのである。
そして、結果的にとても残念が結果として現れてくるにちがいない。
我々には今のスランプがどれだけ深くなるのか見当がつかないし、あるいは定義的に不況と呼べるものに合致するかも不明だ。しかし、単なる大きな下降への本当の機会に直面しているだけでなく、普通の不況への対策―FEDによる政策金利の切り下げる―だけでは経済を戻すのに十分ではないことに陥ってる。(詳しくは、私のブログを見てください。krugman.blogs.nytimes.com)
もしこれが起きたら、ブッシュ政権の主張していたことや、それを受け入れてしまった民主党の動向、つまり刺激策と呼ばれるものの効果が得られないことを深く後悔することになるだろう。
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