あまりアメリカの大統領選を深追いしてもしょうもないのだけど、アメリカリベラルの旗手としてはクルーグマンとロバート・ライシュ(クリントン政権時の労務長官で現在バークレーの経済学教授、アラン・グリーンスパンについて語ったブログの翻訳) だと僕の少ない知識では思う。この二人に共通してるのは卓越した経済学者であると共に文章がとても分かりやすいこと。小難しそうに見える政治や経済の話を 万人にコミュニケートできる能力の高さが抜群だということに尽きると思う。その同じリベラルでも大統領予備選の民主党候補の見方は違う。前提として、国民 皆保険の導入をはじめ福祉や中産階級以下に有利な政策をすべきという意見は同じなのだが、ライシュは、クルーグマンのオバマ叩きはちょっと行き過ぎだし、 そもそもよく見ると保険の提案の違いはそんなにないんだから、いずれにしても共和党候補者が勝つよりよほどましな政権運営になるんだからあんまり今の段階 で片方を叩き過ぎないようにと言っていた。クルーグマンの方ではやっぱりオバマの案は皆保険ではないしコストも割高で、ヒラリーの案の方が、そんなにかわらないコストで倍近い人間(1240億ドルで4千7百万人に対し1020億ドルで2千5百万人)を保険加入でき、少なくとも保険に関してはヒラリーがましだと言ってる。中割れしている場合でないってのはクルーグマンは百も承知だ。というのは、いずれにしても候補者が絞られてくると今度は共和党のサイドは人格攻撃を始めるからだ。その時に重要なのはそれに付き合うのではなく政策を論じることだということだ。少なくとも保険に関してはオバマよりクリントンが優れていると政策の妥当性を話すようにしているのだろう。
一方で、NYTのコラムニスト、フランク・リッチは、ジョンFケネディが大統領選を戦った時代と今を重ねて、アメリカがうすらぼんやりとした変化を求めていた空気が当時の状況とそっくりであると述べている。日本ではKYと か言って空気読めないなどと、間主観的な意思疎通を日本特有文化みたいに思っているが、どっこいアメリカ人も空気の話をしているわけだ。当時、アイゼンハ ワーという人気の大統領の後釜にニクソンが居て彼は政治的にも老練であった。しかし時代は変化を求めていた。ケネディがやるべきことは、なんとなくその期 待感に乗ってしまうことだった。つまりオバマも政治経験が浅く、黒人で新しい、なんとなく変化をもたらしてくれそうだというふわふわした空気があって、な んだかわからないけど乗っかってきてることだ。だからクリントン女史が「leap of faith」(奇跡を呼ぶ)必要はなく現実的に戦う人間が必要だと強調したのは、ひとまず正しい戦略なのではとリッチは述べている。それはアメリカだけでなく日本もまさにそうだと思う。政策を地道に実行に移すこと。
とはいえ クルーグマンもライシュもリッチの言ってることもまあ僕からしたら対岸の話である。やはり日本の政治・経済をどげんかなってもらわな困るというのがある。 やっと最近、高橋洋一の「財投改革の経済学」を読んだ。近所の図書館で購入してもらったのだけど思ったより早く買ってくれてありがとう。この本の主張の柱 は3つあったのかと思う。
1、郵政改革つまり郵貯の貯金を主に政府や地方政府などに、コスト意識やリターン意識のないままに使わせていた資金を民間に活用 できるようにするもの。
2、隠れ資産の有効活用。
3、マイルドインフレを目標にした金融政策の実施。
細かなところは分からないし、突っ込みどころもあるの だろうけど、相当日本経済にとって好機を秘めているのだと思った。1に関しては、小泉総理というカリスマと竹中大臣というサンドバックを擁して実施に向け て基礎工事はすでに始まっている。
2については霞ヶ関埋蔵金の議論が多少出ているようには思う。財政再建は必須のものだし増税論議も出ているが、その前に やることがあるだろうというのは誰もが思うことだ。
3は、今の所、ほとんど動きがない。自民党の中川元幹事長や、竹中大臣がスポークスマンとして名目成長 率を高める必要があるという話を聞く程度だが、当の金融政策実行する日銀の中の人からこんな話をしているのを聞いたことがない。やはり今後の日銀総裁の人 事の行方が気になるところだ。ところでもちろん日銀の総裁の人事も要は政策の中身と実行力が大事だ。総裁の人事で、日本経済の行方のすべてが決まってしま うなんてこともないと思う。もしそうなら、このポストには野球のイチロー以上の高額の年俸で世界最高峰の知性を迎え入れるべきじゃないだろうか。
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